12. Decorator パターン
- 2012/04/26 一部修正しました
- 12.1 Decorator パターンとは
- 12.2 サンプルケース
- 12.3 Decoratorパターン まとめ
12.1 Decorator パターンとは
第12章では、Decorator パターンを学びます。Decorate とは、英語で「装飾者」を意味する言葉です。Decorator パターンでは、飾り枠と中身を同一視することで、より柔軟な機能拡張方法を提供します。
Decoratorパターンは機能を一つひとつかぶせていくイメージになります。ある機能を持ったDecorationをコアとなるものにかぶせていくイメージです。
12.2 サンプルケース
サンプルケースでは、アイスクリームの話をしたいと思います。アイスクリーム屋さんでは、自由にトッピングを選べるようになっています。お客さんは、トッピングしなくても良いし、複数のトッピングを重ねて選択することもできます。
まずは、アイスクリーム共通のインタフェースとして、以下のインタフェースを定義します。
public interface Icecream{ public String getName(); public String howSweet(); }
これらのインタフェースを持つクラスとしては、バニラアイスクリームクラス、抹茶アイスクリームクラスなどが以下のように提供されています。
public class VanillaIcecream implements Icecream{ public String getName(){ return "バニラアイスクリーム"; } public String howSweet(){ return "バニラ味"; } }
public class GreenTeaIcecream implements Icecream{ public String getName(){ return "抹茶アイスクリーム"; } public String howSweet(){ return "抹茶味"; } }
さて、ここで、これらのアイスクリームインタフェース実装クラスにトッピングをしていくことを考えましょう。
トッピングとしては、カシューナッツ、スライスアーモンドを考えて見ましょう。
カシューナッツがトッピングされたバニラアイスクリームや、スライスアーモンドがトッピングされたバニラアイスクリームが要求されるわけです。
これらのトッピングを乗せたインスタンスが必要となる場合、どのようなクラス設計をすればよいでしょうか。
ここでは、トッピングを乗せることで、名前(getName メソッドの返り値)が変わり、味(howSweet() メソッドの返り値) は変わらないことにします。
このような要求を満たすために、カシューナッツがトッピングされたバニラアイスクリームを表現するために、カシューナッツバニラアイスクリームクラスを作成する方法が考えられます。
public class CashewNutsVanillaIcecream extends VanillaIcecream{ public String getName(){ return "カシューナッツバニラアイスクリーム"; } }
なるほど、これでもカシューナッツが乗ったバニラアイスクリームを得ることができます。
Icecream ice = new CashewNutsVanillaIcecream();
しかし、このような「継承を利用した機能の追加」は、非常に固定的なものとなってしまいます。例えば、カシューナッツを乗せた抹茶アイスクリームを表すインスタンスが欲しい場合は、抹茶アイスクリーム継承クラスが必要となるでしょう。
Decorator パターンは、このように、様々な機能追加を柔軟に行いたい場合に威力を発揮します。
Decorator パターンを利用した設計では、拡張機能部分のみを持たせた別クラスを用意し、 そのクラスのインスタンス変数に、拡張対象となるインスタンスを持たせ、 拡張対象と同じインタフェースを実装させます。
サンプルケースの場合は、トッピングとなるカシューナッツを表すクラスを作成します。
public class CashewNutsToppingIcecream implements Icecream{ private Icecream ice = null; public CashewNutsToppingIcecream(Icecream ice){ this.ice = ice; } public String getName(){ String name = "カシューナッツ"; name += ice.getName(); return name; } public String howSweet(){ return ice.howSweet(); } }
クラス図は以下のようになります。 CashewNutsToppingIcecream クラスは、カシューナッツがトッピングされたアイスクリームを表すクラスです。このクラスは、Icecream インタフェースを実装し、その getName() メソッドでは、自身が持つインスタンス変数 ice(Icecream インスタンス) の getName() で得られる値に「カシューナッツ」という文字列を付加した値を返り値として返します。また、howSweet() メソッドでは、インスタンス変数 ice の howSweet() メソッドの返り値をそのまま返しています。
このような設計とすることで、以下のように、カシューナッツがトッピングされたバニラアイスクリームも、カシューナッツがトッピングされた抹茶アイスクリームも、 スライスアーモンドがトッピングされたバニラアイスや、スライスアーモンドと、カシューナッツの両方がトッピングされたバニラアイスクリームなど、多様な組合せでのトッピングが可能になります。
Icecream ice1 = new CashewNutsToppingIcecream(new VanillaIcecream()); Icecream ice2 = new CashewNutsToppingIcecream(new GreenTeaIcecream()); Icecream ice3 = new SliceAlmondToppingIcecream(new CashewNutsToppingIcecream(new VanillaIcecream()));
とても柔軟な機能追加が可能となっていることがわかると思います。
12.3 Decoratorパターン まとめ
Decoratorパターンの一般的なクラス図は以下のようになります。
[引用] 『Java言語で学ぶ デザインパターン入門』(結城浩 ソフトバンクパブリッシング株式会社出版 2001年)